「狼狽」〜第三章〜心の扉
2004年8月18日 連載とまぁ、シャルとの出会いはそんなところだ。私の無意識に発した言葉による……はぁ、何故私はあんな事を……。また物思いに耽っている私を“親友”は一喝した。
「こら!さっきから何ブツブツ言ってんだ……それよりも、ちゃんと上手いことやってんのか?」
……痛い……やっと互いの名前を教え合ったくらいの進展など、報告するだけ無駄の様な……。
「いや、それがさっき名前をお互いに教えあっただけだよ。その他は一切進展していない。」
「おいおい…それじゃ報告出来ねえなぁ……。自己紹介の一番基本しか出来てないんじゃぁな……。」
やはり報告は出来ないらしい。ま、それもそうだな……。名前だけ報告しても何の情報にもなるはずがない。なんせこの子は記憶自体が無いのだから……。名前なんかよりも重要な記憶がこの無愛想な少女の頭の片隅で埃を被ってるんだから……。
「なぁ…シャル、君はこの世界を知ってるかい?」
「お、おい……いくらなんでもそんくらいは記憶喪失だからって分かるだろ?ケイス…お前……神経質だなぁ……。」
ザイバックの嘲笑をキッと私は睨みつけて黙らせた。初めて会った時から私にはこの少女に違和感があった……そう、何か無機質な……この世界に存在する人間の雰囲気とはどこか違うような…
「……分からない……何も覚えていないの……。」
「嘘だろ……マジでこの世界の事すら忘れちまってるのかよ……こりゃ冗談きついぜ……。」
明らかな狼狽を浮かべてザイバックは頭を抱え込んだ。無理も無いか……この世界を知らないって事は、人間が哺乳類だって事を知らないと言ってる様なもんだからな……。
「そっか……でも、何か感じないのかい?この世界にいた様な気がするとか……。」
「ごめんなさい……何も分からないわ……でも…。」
「でも…何だい?」
「一つだけ言える事があるわ……私はこんな世界で生まれてない……。」
「え!?」
あまりに突拍子な応えに私は自分でも恥ずかしいくらいの上擦った声を上げてしまった。ザイバックも目が点といった様子である……この世界で生まれたんじゃない……???……一体どういう事だ?!じゃあこの目の前にいる寡黙で無愛想な少女は別世界の住人って事か?……ハッ、馬鹿馬鹿しい……この世界以外に世界なんて存在してるハズ無いじゃないか……。きっと頭が混乱してるんだろう……。私は一、二度頭を叩くとシャルに向かってこう質問した。
「すまない……私の質問がマズかったかな……うんと、そうだな……君は、どっから来たのか覚えてるかい?」
「……だから、この世界で生まれたんじゃないの……だから…私にこの世界での居場所なんてない……全然分からないの……。」
「おい!ケイス……どうするよ?……コイツ、別世界から来たんだろ?」
「何を言ってるんだよザイバック……ハハ、そんなハズ無いだろう?世界が二つも存在してるなんて本気で思っているのか?だったら、もっと古くからこういう事が起きてて当然だろう?」
「あっ!!そうか……。」
「信じてくれないならそれでもいい……私も貴方達みたいな人達とこれ以上話す口なんて持っていないから……。」
そう言うとシャルはそそくさと私の執務室を退席した。……あれ?シャルってあんな大人な雰囲気だったか?ついさっきまでは記憶喪失に見舞われた悲劇の少女の様だったと思うが……。ん?待てよ……。まさか……彼女の言っている事は本当なのか!?……彼女は別世界からコッチの世界に何らかの間違いでやって来てしまった……だから何を質問されても分からない……。記憶喪失じゃなく、元々ここの世界じゃない別の世界で育ったから情報が無い……だから国王の部屋に平気で忍び込めた……。国王の地位や偉大さなんてコッチの世界での話で、シャルの世界では王の地位は存在しない……。確かにそれなら説明が着く。だが、そんな事誰が信じる?そんな報告をしようものなら気違いか何かと思われるに違いない……。私は気付くとシャルを追っていた……。
「お、おい!!追っかけんのか?俺も手伝うぞ!!」
「いや、私一人で充分だ……。君はそこにいてくれ。」
ザイバックの心遣いは嬉しかったが、今はどうしても確かめねばならない事が出来てしまった……。そう…彼女は…シャルは……本当に別世界の住人なのか……記憶喪失ではないのか……。そして、何故だかは分からないがその問いの答えを知られてはならない様な気がするからだ………。私は動揺に激しく拍動する心臓を抑えながらシャルの後を追った……。
「こら!さっきから何ブツブツ言ってんだ……それよりも、ちゃんと上手いことやってんのか?」
……痛い……やっと互いの名前を教え合ったくらいの進展など、報告するだけ無駄の様な……。
「いや、それがさっき名前をお互いに教えあっただけだよ。その他は一切進展していない。」
「おいおい…それじゃ報告出来ねえなぁ……。自己紹介の一番基本しか出来てないんじゃぁな……。」
やはり報告は出来ないらしい。ま、それもそうだな……。名前だけ報告しても何の情報にもなるはずがない。なんせこの子は記憶自体が無いのだから……。名前なんかよりも重要な記憶がこの無愛想な少女の頭の片隅で埃を被ってるんだから……。
「なぁ…シャル、君はこの世界を知ってるかい?」
「お、おい……いくらなんでもそんくらいは記憶喪失だからって分かるだろ?ケイス…お前……神経質だなぁ……。」
ザイバックの嘲笑をキッと私は睨みつけて黙らせた。初めて会った時から私にはこの少女に違和感があった……そう、何か無機質な……この世界に存在する人間の雰囲気とはどこか違うような…
「……分からない……何も覚えていないの……。」
「嘘だろ……マジでこの世界の事すら忘れちまってるのかよ……こりゃ冗談きついぜ……。」
明らかな狼狽を浮かべてザイバックは頭を抱え込んだ。無理も無いか……この世界を知らないって事は、人間が哺乳類だって事を知らないと言ってる様なもんだからな……。
「そっか……でも、何か感じないのかい?この世界にいた様な気がするとか……。」
「ごめんなさい……何も分からないわ……でも…。」
「でも…何だい?」
「一つだけ言える事があるわ……私はこんな世界で生まれてない……。」
「え!?」
あまりに突拍子な応えに私は自分でも恥ずかしいくらいの上擦った声を上げてしまった。ザイバックも目が点といった様子である……この世界で生まれたんじゃない……???……一体どういう事だ?!じゃあこの目の前にいる寡黙で無愛想な少女は別世界の住人って事か?……ハッ、馬鹿馬鹿しい……この世界以外に世界なんて存在してるハズ無いじゃないか……。きっと頭が混乱してるんだろう……。私は一、二度頭を叩くとシャルに向かってこう質問した。
「すまない……私の質問がマズかったかな……うんと、そうだな……君は、どっから来たのか覚えてるかい?」
「……だから、この世界で生まれたんじゃないの……だから…私にこの世界での居場所なんてない……全然分からないの……。」
「おい!ケイス……どうするよ?……コイツ、別世界から来たんだろ?」
「何を言ってるんだよザイバック……ハハ、そんなハズ無いだろう?世界が二つも存在してるなんて本気で思っているのか?だったら、もっと古くからこういう事が起きてて当然だろう?」
「あっ!!そうか……。」
「信じてくれないならそれでもいい……私も貴方達みたいな人達とこれ以上話す口なんて持っていないから……。」
そう言うとシャルはそそくさと私の執務室を退席した。……あれ?シャルってあんな大人な雰囲気だったか?ついさっきまでは記憶喪失に見舞われた悲劇の少女の様だったと思うが……。ん?待てよ……。まさか……彼女の言っている事は本当なのか!?……彼女は別世界からコッチの世界に何らかの間違いでやって来てしまった……だから何を質問されても分からない……。記憶喪失じゃなく、元々ここの世界じゃない別の世界で育ったから情報が無い……だから国王の部屋に平気で忍び込めた……。国王の地位や偉大さなんてコッチの世界での話で、シャルの世界では王の地位は存在しない……。確かにそれなら説明が着く。だが、そんな事誰が信じる?そんな報告をしようものなら気違いか何かと思われるに違いない……。私は気付くとシャルを追っていた……。
「お、おい!!追っかけんのか?俺も手伝うぞ!!」
「いや、私一人で充分だ……。君はそこにいてくれ。」
ザイバックの心遣いは嬉しかったが、今はどうしても確かめねばならない事が出来てしまった……。そう…彼女は…シャルは……本当に別世界の住人なのか……記憶喪失ではないのか……。そして、何故だかは分からないがその問いの答えを知られてはならない様な気がするからだ………。私は動揺に激しく拍動する心臓を抑えながらシャルの後を追った……。
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