「何てことだ……私が、レイヴァンを吸収したばかりに。」

「何!?お前、レイヴァンを吸収したのか?」

「??何の話をしているのですか?」

ケイナスが怪訝そうに尋ねてきた。そうか、彼はまだ何も知らないんだっけ……私はケイナスに全てを告げた。彼も仲間だ…隠し事は良くない……。例え信じてもらえなくとも、いいんだ。

「なんと!?その様な経緯があったとは……俄かには信じ難いですが、ケイス殿が嘘を言うハズがありません。拙者は信じますぞ!!」

「ありがとう……。」

「して、ケイス殿の中に眠っていたレイヴァンが覚醒し、それを受け入れた変わりに異世界の知識を手に入れた……そして一時期は再び眠っていたレイヴァンが先程の決勝で覚醒した。ケイス殿はそれを必死に抑え込もうとしたところ、自分でも無意識にレイヴァンを吸収した……。そしてレイヴァンと完全な融合を果たしたケイス殿は全く新しい人間として生まれ変わったと……そういう事ですな。」

「そうみたいなんだ。だから今、君達の目の前に居るのはケイス・アルムナスじゃない………。」

「で、でもよ……どうしてそんな事が出来たんだよ?!」

「それは私にも分からない……。ただレイヴァンを抑えようと必死に抵抗していたら、急にレイヴァンが苦しみだしたんだ…。」

混乱する頭を抑えながら、ザイバックは今の現実を受け入れようと必死にブツブツ何かを言っていた。一方、ケイナスは大よその事態を冷静に分析して納得していた………。それにしても、何故私は吸収出来たんだ………?……。

「分かった……お前はケイスじゃないんだな。だったら、名前はどうすんだよ?」

そうだ、この姿じゃもうケイスではない……ケイスと言う人間はもう居ないんだ……。ん?何だ?……何かが意識に呼びかけてくる……【レム】……【真人(トゥレイオ)】……??…何なんだ?
……護り手との契約……それが護り手を取り込み、新生すること……護り手の能力や知識を身に付け、更に進化した護り手になる者……それが真人(トゥレイオ)……。これは?一体誰なんだ?私に語りかけてくるのは一体誰だ……?

「おい!大丈夫か!?頭が痛むのか?」

ザイバックの声に、意識に語りかけてきた声は途絶えた。

「あ、ああ……レム……私は、いや俺はレムだ。」

「レム?俺?」

「ああ、誰かが俺に教えてくれたんだ。直接意識の中に……。
レイヴァンはシャルを護る【護り手】、そしてその護り手と契約を結んだ者、つまり受け入れた者は護り手を吸収する事で、新たな護り手として新生をする……【真人(トゥレイオ)】…それが今の俺だ……。レムとは、ギエルハイムの言葉で【始まり】を意味し、つまり新たに生まれ変わった俺にピッタリの名ってわけさ。俺という一人称は、レイヴァンの名残かもしれない。」

「それって、まさかアッチの人間の仕業じゃねえのか?!」

「そうかもしれない……どうやら、俺には自身でも知らない秘密があるのかもしれない……レイヴァンが俺の中で眠っていたのも……俺が短期間であんなに強くなったのも……。」

暫しの静寂が辺りを包んだ。分からない事が多すぎて、混乱している……。俺は一体……誰なんだ……?

「ええい!こうしてても始まらねえ!!つまり、ケイスはレムになって、強くなった!!レイヴァンは居ない!これでいいじゃねえか!!細かいことは後で考えようぜ!」

ザイバックがたまりかねた様に大手を振って言った。

「そうですな。真実はシャル殿と共にゲートを閉じに行けば自ずと分かるでしょう。」

ケイナスも納得したように頷いた。

「すまないな。俺の所為で色々と苦労をかける…。」

「何言ってんだ!レムになってもお前は俺の親友だろうが!!」

「そうですぞ!」

「みんな………。」

「よし!そうと決まったら先ずは屋敷に戻ってエレンブラやシャルにこの事を報告しようぜ!」

「そうだな……行こう!」

こうして、俺はトゥレイオとして新生し、レムという名を受けた…。何者かの意図によって……。それが何なのか、俺はそもそも誰なのか……事の真相、アウヴァニアとギエルハイムの関係……それは閉じたゲートにあるに違いない……。俺達は屋敷に戻り、シャルと共に旅に出る事を決め、医務室を後にした……
俺の運命の歯車が、少し回り始めた様な気がする………。

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