「狼狽」〜第十三章〜鷹(アクイラ) 続き
2004年9月6日 連載「!……そんなに【魔素】は侵食してるの?」
「ええ!もう大陸の半分は【魔素】に食われました…。このままじゃギエルハイムが消滅するのも時間の問題です。」
「なんてこと………。他の二人の護り手は?」
「今はまだ合流できません。次期に巫女様の旅に参加すべく、コチラ側にやってきますので、ご心配なさらず……。」
深刻な面持ちで会話を交わすアクイラとシャル……傍から見ても、一刻を争う事態に直面している事を察しずにはいられなかった。
「レム……ボク達が頑張らなきゃ、シャルさんの世界は消えちゃうんだよね……。」
エレンブラがレムにしがみ付いたまま言った。レムも大きく頷き、決意と覚悟を新たにした。ザイバックやケイナスの表情にも真剣な色が浮かんでいる……。暫し辺りは異様な緊張感が張り詰めた……と、
「……とまぁ、そんなトコです♪それじゃあ、出発の前に、改めて全員自己紹介をしましょう!」
今までの緊迫した顔は一転、明るい顔に変わった。張り詰めていた緊張感はたちどころに消え、何とも不思議な男だと一同は思った。
「それでは、まずは私から♪私は【静寂の巫女】で在らせられるシャル様を護る【護り手】、ギエルハイムの【マイヤーニ】出身!25歳独身!!泣く子も黙るいい男!【アクイラ・メイヤー】だぁーー!!」
「………せ、拙者は【ケイナス・アデンバー】と申す者で、剣士であります。刀鍛冶で有名な【トウコク】の出であります。」
「俺は【ザイバック・ブレイブス】!!レムとは切っても切れない腐れ縁で繋がった、いわば兄弟のようなもんだ!【レンブラント王国】の【王国騎士団】の将軍をやってる!戦闘こそ俺のフィールドだぜーーー!!」
「ボクは【エレンブラ・シャルロット】。レムの許婚で、ザイバックとも旧知の仲なんだ。【レンブラント王国】の出身で、趣味はレムとの結婚生活をシミュレーションする事でぇ〜す♪」
「私は【シャル・アトワイル】……。ギエルハイムに巣食う魔物を封じるために生まれた【静寂の巫女】。ゲートを開き、幸福の力をギエルハイムに送り、魔素を打ち消す事が今の使命です。
みなさん、共に頑張りましょう!!」
「最後は俺か…。俺は【レム】。レイヴァンを吸収する前は【ケイス・アルムナス】として23年間生きてきた。この旅はギエルハイムだけでなく、アウヴァニアの命運をも変えるかもしれないと思う……。だから、みんな!!力を合わせ、必ずゲートまで辿り着こう!!」
改めて自己紹介を済ませた一同の心には、確固たる決意と覚悟が生まれていた。志気も上昇している……。
「でだ、一つ言っておくぜ!ギエルハイムの魔素はかなり増えてる。多分、魔素の一部は【エンベラスゲート】からコッチに染み出して来るはずだ。」
「魔素?エンベラスゲート?」
エレンブラが首を傾げ頭を抑えながら聞いた。ザイバックも同様に頭を抱えアクイラを見ている。
「そっか、知らないんだよなぁ……。【魔素】って言うのは魔物、つまりバケモノを生み出す素だ。魔素に人間の負の感情が加わると、実体化して魔物になる。【エンベラスゲート】ってのは
ギエルハイムとアウヴァニアを経由する俺達みたいな奴等がトランスポーテーションすんのに必要な門さ。」
「ト、トランポリ……???」
「ハハハ、トランスポーテーションだよザイバック!そうだな、簡単に言えば瞬間移動かな?」
「なるほど…。」
レムの不安は的中した……。アクイラの言っていること…それは魔物がアウヴァニアに出現するということだ。つまり、一般市民を恐怖に陥れ、虐殺を行う……そんな惨劇がこれから起こる可能性が十分にある事なのだ……。グッと拳を握り、レムは一刻も早いゲート開通を強く決意した。ザイバックやケイナス、エレンブラも同様の想いを強くしていた。……一方、シャルは顔色が優れない様子で、ずっと手を握り締め、思いつめた様に俯いていた。
アクイラは異変に気付いたのか、しきりにシャルに声を掛けた。が、シャルの様子は一向に変わらなかった。レムは、ゆっくりとシャルに近づくと、ニッコリといつもと変わらぬ笑顔を見せた。
「シャル…君が責任や罪悪感を感じる必要は無いよ。俺達が必ずゲートまで無事に、そして迅速に君を運ぶから……。君は希望を信じていてくれ。ギエルハイムを、アウヴァニアを救えるのは君だけなんだから。それなのにそんな切迫してたら、きっと救えるものまで救えなくなる……。」
レムの言葉にシャルの顔の緊張が解けていった。シャルは大きく頷くと、
「そう、だよね!私がいつも笑顔で希望を捨てなければ、きっと大丈夫だよね!!」
迷いの無い鷹揚とした声で言った。
「そうだぜ!!それでいいんだよ!」
「希望を捨てぬ限り、笑顔を絶やさぬ限り、勝機は常に我々にあり!ですな。」
「ボクも頑張るぞ!!」
「みんな燃えてるねぇい!それでこそ巫女様を護るチームってもんだ!!」
「シャル……頑張ろうな。」
「うん……。」
………アウヴァニア暦1200年 九月七日……静寂の巫女とその護り手達の旅は、始まりの鐘を鳴らした……。
「ええ!もう大陸の半分は【魔素】に食われました…。このままじゃギエルハイムが消滅するのも時間の問題です。」
「なんてこと………。他の二人の護り手は?」
「今はまだ合流できません。次期に巫女様の旅に参加すべく、コチラ側にやってきますので、ご心配なさらず……。」
深刻な面持ちで会話を交わすアクイラとシャル……傍から見ても、一刻を争う事態に直面している事を察しずにはいられなかった。
「レム……ボク達が頑張らなきゃ、シャルさんの世界は消えちゃうんだよね……。」
エレンブラがレムにしがみ付いたまま言った。レムも大きく頷き、決意と覚悟を新たにした。ザイバックやケイナスの表情にも真剣な色が浮かんでいる……。暫し辺りは異様な緊張感が張り詰めた……と、
「……とまぁ、そんなトコです♪それじゃあ、出発の前に、改めて全員自己紹介をしましょう!」
今までの緊迫した顔は一転、明るい顔に変わった。張り詰めていた緊張感はたちどころに消え、何とも不思議な男だと一同は思った。
「それでは、まずは私から♪私は【静寂の巫女】で在らせられるシャル様を護る【護り手】、ギエルハイムの【マイヤーニ】出身!25歳独身!!泣く子も黙るいい男!【アクイラ・メイヤー】だぁーー!!」
「………せ、拙者は【ケイナス・アデンバー】と申す者で、剣士であります。刀鍛冶で有名な【トウコク】の出であります。」
「俺は【ザイバック・ブレイブス】!!レムとは切っても切れない腐れ縁で繋がった、いわば兄弟のようなもんだ!【レンブラント王国】の【王国騎士団】の将軍をやってる!戦闘こそ俺のフィールドだぜーーー!!」
「ボクは【エレンブラ・シャルロット】。レムの許婚で、ザイバックとも旧知の仲なんだ。【レンブラント王国】の出身で、趣味はレムとの結婚生活をシミュレーションする事でぇ〜す♪」
「私は【シャル・アトワイル】……。ギエルハイムに巣食う魔物を封じるために生まれた【静寂の巫女】。ゲートを開き、幸福の力をギエルハイムに送り、魔素を打ち消す事が今の使命です。
みなさん、共に頑張りましょう!!」
「最後は俺か…。俺は【レム】。レイヴァンを吸収する前は【ケイス・アルムナス】として23年間生きてきた。この旅はギエルハイムだけでなく、アウヴァニアの命運をも変えるかもしれないと思う……。だから、みんな!!力を合わせ、必ずゲートまで辿り着こう!!」
改めて自己紹介を済ませた一同の心には、確固たる決意と覚悟が生まれていた。志気も上昇している……。
「でだ、一つ言っておくぜ!ギエルハイムの魔素はかなり増えてる。多分、魔素の一部は【エンベラスゲート】からコッチに染み出して来るはずだ。」
「魔素?エンベラスゲート?」
エレンブラが首を傾げ頭を抑えながら聞いた。ザイバックも同様に頭を抱えアクイラを見ている。
「そっか、知らないんだよなぁ……。【魔素】って言うのは魔物、つまりバケモノを生み出す素だ。魔素に人間の負の感情が加わると、実体化して魔物になる。【エンベラスゲート】ってのは
ギエルハイムとアウヴァニアを経由する俺達みたいな奴等がトランスポーテーションすんのに必要な門さ。」
「ト、トランポリ……???」
「ハハハ、トランスポーテーションだよザイバック!そうだな、簡単に言えば瞬間移動かな?」
「なるほど…。」
レムの不安は的中した……。アクイラの言っていること…それは魔物がアウヴァニアに出現するということだ。つまり、一般市民を恐怖に陥れ、虐殺を行う……そんな惨劇がこれから起こる可能性が十分にある事なのだ……。グッと拳を握り、レムは一刻も早いゲート開通を強く決意した。ザイバックやケイナス、エレンブラも同様の想いを強くしていた。……一方、シャルは顔色が優れない様子で、ずっと手を握り締め、思いつめた様に俯いていた。
アクイラは異変に気付いたのか、しきりにシャルに声を掛けた。が、シャルの様子は一向に変わらなかった。レムは、ゆっくりとシャルに近づくと、ニッコリといつもと変わらぬ笑顔を見せた。
「シャル…君が責任や罪悪感を感じる必要は無いよ。俺達が必ずゲートまで無事に、そして迅速に君を運ぶから……。君は希望を信じていてくれ。ギエルハイムを、アウヴァニアを救えるのは君だけなんだから。それなのにそんな切迫してたら、きっと救えるものまで救えなくなる……。」
レムの言葉にシャルの顔の緊張が解けていった。シャルは大きく頷くと、
「そう、だよね!私がいつも笑顔で希望を捨てなければ、きっと大丈夫だよね!!」
迷いの無い鷹揚とした声で言った。
「そうだぜ!!それでいいんだよ!」
「希望を捨てぬ限り、笑顔を絶やさぬ限り、勝機は常に我々にあり!ですな。」
「ボクも頑張るぞ!!」
「みんな燃えてるねぇい!それでこそ巫女様を護るチームってもんだ!!」
「シャル……頑張ろうな。」
「うん……。」
………アウヴァニア暦1200年 九月七日……静寂の巫女とその護り手達の旅は、始まりの鐘を鳴らした……。
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