「我が家の氏神さま!」〜第一話―?『御主人?!』〜
2004年9月18日 連載―梛と茜は出会ってまだ十数分……。にも関わらず同じ帰路を並んで歩いていた…。何でも茜は【氏神】という神で、霊力を持った人間に仕えるのが使命だという……。古くから主の器を探していたらしく、梛がその器に当てはまるらしく、茜の主人となる事になった。一方的に……。
「あのさぁ、茜は神様なんだろ?……てことは霊力を持った人間にしか見えないのか?」
素朴な疑問を梛は何気無くぶつけると、茜をチラと見遣った。
「はい。詳しくは霊力者にのみ……ですけど。」
「霊力者?」
「はい!霊力者とは霊感や霊力が際立って高い人間の事です。
霊だけとコミュニケーションが取れるのは【霊感者】って言うんですよ。」
ふーんと感心気味に頷くと、梛は次なる疑問をぶつけた。
「で、氏神って神様なのに何で人間なんかに仕えるんだ?」
「神様と言っても、その地位や階級は様々ですから…。普段、神様と呼ばれているのは私よりも遥かに高貴な神なんです。私達氏神は【従士神】という霊力者に仕える事で神としての本領を発揮するタイプなんです。」
「そうなんだ……。じゃあさ、茜は初めから俺を待っててあんなトコに居たワケ?」
「は、はい……。【元始開闢天神】様に時期が来たとの命を受けましたので……。」
「元始開闢天神?」
「はい。私達氏神をお創りになられた最高神でいらっしゃいます。」
「なるほど……で、時期って?」
「それは……分かりません……。」
「最高機密って奴?」
「恐らく……時が来れば何れ分かるとの事らしいです…。」
「時……ねぇ……。」
頭をポリポリと掻きながら、梛は頭の中で現在の状況を整理していた。俄かには未だ信じられないが、茜が嘘を吐いている様にも見えない……ここは自分の勘を信じようと英断すると、梛は改めて立ち止まり、茜に踵を返すとニコリと微笑んだ。
「ま、これも何かの縁なんだろうよ……。茜の目をみりゃ嘘じゃないって分かる気がするしな。会って間もないけど……ヨロシクな!!」
ギュッと茜の手を握ると、梛は照れ臭そうに鼻を掻いた。
「梛様……。」
茜は嬉しそうに顔を綻ばせながら梛の顔を見つめた。
「な、なんだよ?そんなに見るなって……ほ、ほら!行くぞ!姉貴にこの事報告しないといけないし……そ、それに、何よりも今俺は独り言を言ってる様にしか見えてないんだから……変態扱いされちまうだろ?!」
「はい!」
……こうして、梛と茜は出会った…。神とそれを従える霊力者……。梛にとっては俄かには事態を飲み込めていなかったが、退屈せずには済みそうだった……。普段の味気の無い虚無な日常に哀れみを持った神様がスパイスを持ってきてくれた……。そう解釈をし、一応の納得に行き着いたのだ。暫く談笑を交わしながら歩みを進めている内に、いつの間にか姉と二人で住んでいる出雲の自宅に到着していた……。
「さてと、ここが俺の家!んでもって姉貴の家でもある!つまり、茜は今日から此処で暮らす……でいいんだっけ?」
「はい!お世話になります!!……ところで、お姉さんがいらっしゃるんですか……?」
「そうなんだ、口うるさくて大雑把なのが一人……。」
途中まで意気揚々と話していた梛の声が突然に消え入るような声になった。茜は訝しそうに首を傾ぐと、その原因に気付いた。
「だーれが……口うるさくって大雑把だってぇ〜?え?」
梛の後ろに立っている女性は、拳をボキボキと鳴らしながら梛を静かに凝視していた。容姿はとても美しく、喋り方からは想像も付かない程である……。背丈は梛よりも低いものの、放つ威圧感が凄まじく、梛が小さく見える……。
「い、いや……何でもない……。」
「ふ〜ん……ま、許してやるか…っておや?見かけない娘じゃないか……着物なんか着ちゃって……何?アンタの彼女?」
野卑に笑いながら女性は梛の肩をバンバンと勢い盛んに叩いた。
「いってぇ!!……違うって!!彼女じゃねえよ!悠良姉!!」
悠良…それが女性の名であった。【出雲 悠良】、梛の実姉であり、霊力者でもある……容姿は抜群に良く、スタイルも申し分が無い……。性格の粗暴さを除いては……。
「じゃ、何だってんだよ?!」
「ゲホゲホ……茜は【神様】だ!!」
………周囲の空間が一気に凍りついた様に静まり返った…。悠良自身も硬直して固まっている……。
「は?……何だって?」
「だから!茜は、出雲の姓に宿った【氏神】なんだよ!!」
「…………。」
「………悠良姉?……。」
「………。」
「……ダメだ。」
―三十分後……。
「アッハハハハハハ!一時は梛のアホがエスカレートしたと思ったよ!確かに茜ちゃんからは霊力を感じるよ!にしても……梛の【氏神】なんだよ!の必死な顔……プッ…プププ…アッハハハハハハ!!」
茜本人からの説明に漸く事態を把握した悠良はすっかり茜と打ち解けていた。
「クスッ……悠良さんって面白い方ですね♪梛様。」
「そういうのは大雑把でガサツって言うんだよ!」
「ハハハハ、ボヤかないボヤかない!それに、アタシの事は悠良でいいよ!これから一つ屋根の下に暮らすんだから、他人行儀な呼び方はどうも苦手でね!」
「はい!分かりました。」
「あとさ、梛に仕えんのが茜の使命ならアタシはとやかく言わないけど、気をつけなよ!ああいう年頃の男は狼だからな♪」
「バ、バカ!!何勝手に俺が茜を襲うみたいな展開になってんだよ!?」
顔を紅潮させて焦る梛に悪戯な含み笑いを浮かべながら、悠良は身を捩じらせてふざけた。
「きっと激しいだろうな〜、なんせ溜まってっから♪」
その言葉に反応する様に茜の顔は急激に赤味を湛え始めた。耳まで真っ赤に染め上げると、恥ずかしさに耐え切れなくなったのかその場にへたり込んでしまった。茜のあまりの恥ずかしがり様に流石に反省をしたのか、悠良は気まずそうに茜に近寄った。
「悪い!冗談だよ!!アイツにそんな事をする様な教育は施してないから安心しな!」
「はい……。」
「ホラ見ろ!!大体、悠良姉はデリカシーってモンがねえんだよ!女の癖に平気で下ネタとか言いやがって……しかも、俺をネタにすんな!健全な高校生に!!」
ここぞとばかりに梛の猛反論が開始されるかと思ったのも束の間…悠良は茜の顔に正常さが戻って来るのを確認するや否や、
「ま、初体験が神様ってのも悪くないんじゃない♪な?梛♪」
梛の紅潮した様子を嘲弄しながら二階の自室へと上がっていった。茜の顔は再び真っ赤に染まり、力無く床にへたり込んでしまった。
とんでもなく気まずい雰囲気を残して居間で二人きりになった梛と茜……二人ともさっきの悠良の言葉が頭をグルグルと巡ってしまい、恥ずかしさでとても会話できるどころじゃなかった。
「チクショー……あのガサツ女〜!!絶対この借りは返すからな〜!!」
「あ、あの……梛……様。」
梛は不意に茜に呼ばれ、思わずドキリと動揺してしまった。
「な、なんだ?」
「襲わないで……下さいね。その……心の準備が出来てからで無いと……そのぉ……。」
「だぁーーーっ!!な、何言ってんだよ!?襲わないって!!それに心の準備とかいいから!!」
「え?しなくて良いんですか?」
「あれは姉貴の悪戯だから……気にする必要は無いんだよ。」
「そうだったんですかぁ♪フフフ、やっぱり面白いです♪悠良さんは……。」
「ア、アハハ…天然ね……ハァ……。」
「あのさぁ、茜は神様なんだろ?……てことは霊力を持った人間にしか見えないのか?」
素朴な疑問を梛は何気無くぶつけると、茜をチラと見遣った。
「はい。詳しくは霊力者にのみ……ですけど。」
「霊力者?」
「はい!霊力者とは霊感や霊力が際立って高い人間の事です。
霊だけとコミュニケーションが取れるのは【霊感者】って言うんですよ。」
ふーんと感心気味に頷くと、梛は次なる疑問をぶつけた。
「で、氏神って神様なのに何で人間なんかに仕えるんだ?」
「神様と言っても、その地位や階級は様々ですから…。普段、神様と呼ばれているのは私よりも遥かに高貴な神なんです。私達氏神は【従士神】という霊力者に仕える事で神としての本領を発揮するタイプなんです。」
「そうなんだ……。じゃあさ、茜は初めから俺を待っててあんなトコに居たワケ?」
「は、はい……。【元始開闢天神】様に時期が来たとの命を受けましたので……。」
「元始開闢天神?」
「はい。私達氏神をお創りになられた最高神でいらっしゃいます。」
「なるほど……で、時期って?」
「それは……分かりません……。」
「最高機密って奴?」
「恐らく……時が来れば何れ分かるとの事らしいです…。」
「時……ねぇ……。」
頭をポリポリと掻きながら、梛は頭の中で現在の状況を整理していた。俄かには未だ信じられないが、茜が嘘を吐いている様にも見えない……ここは自分の勘を信じようと英断すると、梛は改めて立ち止まり、茜に踵を返すとニコリと微笑んだ。
「ま、これも何かの縁なんだろうよ……。茜の目をみりゃ嘘じゃないって分かる気がするしな。会って間もないけど……ヨロシクな!!」
ギュッと茜の手を握ると、梛は照れ臭そうに鼻を掻いた。
「梛様……。」
茜は嬉しそうに顔を綻ばせながら梛の顔を見つめた。
「な、なんだよ?そんなに見るなって……ほ、ほら!行くぞ!姉貴にこの事報告しないといけないし……そ、それに、何よりも今俺は独り言を言ってる様にしか見えてないんだから……変態扱いされちまうだろ?!」
「はい!」
……こうして、梛と茜は出会った…。神とそれを従える霊力者……。梛にとっては俄かには事態を飲み込めていなかったが、退屈せずには済みそうだった……。普段の味気の無い虚無な日常に哀れみを持った神様がスパイスを持ってきてくれた……。そう解釈をし、一応の納得に行き着いたのだ。暫く談笑を交わしながら歩みを進めている内に、いつの間にか姉と二人で住んでいる出雲の自宅に到着していた……。
「さてと、ここが俺の家!んでもって姉貴の家でもある!つまり、茜は今日から此処で暮らす……でいいんだっけ?」
「はい!お世話になります!!……ところで、お姉さんがいらっしゃるんですか……?」
「そうなんだ、口うるさくて大雑把なのが一人……。」
途中まで意気揚々と話していた梛の声が突然に消え入るような声になった。茜は訝しそうに首を傾ぐと、その原因に気付いた。
「だーれが……口うるさくって大雑把だってぇ〜?え?」
梛の後ろに立っている女性は、拳をボキボキと鳴らしながら梛を静かに凝視していた。容姿はとても美しく、喋り方からは想像も付かない程である……。背丈は梛よりも低いものの、放つ威圧感が凄まじく、梛が小さく見える……。
「い、いや……何でもない……。」
「ふ〜ん……ま、許してやるか…っておや?見かけない娘じゃないか……着物なんか着ちゃって……何?アンタの彼女?」
野卑に笑いながら女性は梛の肩をバンバンと勢い盛んに叩いた。
「いってぇ!!……違うって!!彼女じゃねえよ!悠良姉!!」
悠良…それが女性の名であった。【出雲 悠良】、梛の実姉であり、霊力者でもある……容姿は抜群に良く、スタイルも申し分が無い……。性格の粗暴さを除いては……。
「じゃ、何だってんだよ?!」
「ゲホゲホ……茜は【神様】だ!!」
………周囲の空間が一気に凍りついた様に静まり返った…。悠良自身も硬直して固まっている……。
「は?……何だって?」
「だから!茜は、出雲の姓に宿った【氏神】なんだよ!!」
「…………。」
「………悠良姉?……。」
「………。」
「……ダメだ。」
―三十分後……。
「アッハハハハハハ!一時は梛のアホがエスカレートしたと思ったよ!確かに茜ちゃんからは霊力を感じるよ!にしても……梛の【氏神】なんだよ!の必死な顔……プッ…プププ…アッハハハハハハ!!」
茜本人からの説明に漸く事態を把握した悠良はすっかり茜と打ち解けていた。
「クスッ……悠良さんって面白い方ですね♪梛様。」
「そういうのは大雑把でガサツって言うんだよ!」
「ハハハハ、ボヤかないボヤかない!それに、アタシの事は悠良でいいよ!これから一つ屋根の下に暮らすんだから、他人行儀な呼び方はどうも苦手でね!」
「はい!分かりました。」
「あとさ、梛に仕えんのが茜の使命ならアタシはとやかく言わないけど、気をつけなよ!ああいう年頃の男は狼だからな♪」
「バ、バカ!!何勝手に俺が茜を襲うみたいな展開になってんだよ!?」
顔を紅潮させて焦る梛に悪戯な含み笑いを浮かべながら、悠良は身を捩じらせてふざけた。
「きっと激しいだろうな〜、なんせ溜まってっから♪」
その言葉に反応する様に茜の顔は急激に赤味を湛え始めた。耳まで真っ赤に染め上げると、恥ずかしさに耐え切れなくなったのかその場にへたり込んでしまった。茜のあまりの恥ずかしがり様に流石に反省をしたのか、悠良は気まずそうに茜に近寄った。
「悪い!冗談だよ!!アイツにそんな事をする様な教育は施してないから安心しな!」
「はい……。」
「ホラ見ろ!!大体、悠良姉はデリカシーってモンがねえんだよ!女の癖に平気で下ネタとか言いやがって……しかも、俺をネタにすんな!健全な高校生に!!」
ここぞとばかりに梛の猛反論が開始されるかと思ったのも束の間…悠良は茜の顔に正常さが戻って来るのを確認するや否や、
「ま、初体験が神様ってのも悪くないんじゃない♪な?梛♪」
梛の紅潮した様子を嘲弄しながら二階の自室へと上がっていった。茜の顔は再び真っ赤に染まり、力無く床にへたり込んでしまった。
とんでもなく気まずい雰囲気を残して居間で二人きりになった梛と茜……二人ともさっきの悠良の言葉が頭をグルグルと巡ってしまい、恥ずかしさでとても会話できるどころじゃなかった。
「チクショー……あのガサツ女〜!!絶対この借りは返すからな〜!!」
「あ、あの……梛……様。」
梛は不意に茜に呼ばれ、思わずドキリと動揺してしまった。
「な、なんだ?」
「襲わないで……下さいね。その……心の準備が出来てからで無いと……そのぉ……。」
「だぁーーーっ!!な、何言ってんだよ!?襲わないって!!それに心の準備とかいいから!!」
「え?しなくて良いんですか?」
「あれは姉貴の悪戯だから……気にする必要は無いんだよ。」
「そうだったんですかぁ♪フフフ、やっぱり面白いです♪悠良さんは……。」
「ア、アハハ…天然ね……ハァ……。」
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